理科塾から望む教育コラム

教育、世相、人と街…、肌で感じた小さな発見と疑問について軽い頭を絞りながら綴ります。

内申点という魔物①―評価の仕組みとその実態―

内申点の意味するものは何だろう?」

高校入試で私が中学の先生とバトルしたあの頃からずっと胸につかえてきたことです。

 

 

学校評価制度の新たな動き

 

先日、文科省中教審有識者ワーキンググループが「学校現場での評価の在り方」について従来の評価方法を見直すというニュースがありました。従来の教科ごとの数値評価(いわゆる内申点)を廃止し、「知識および技能、思考力・判断力・表現力」の観点別評価を導入するというのが、見直しの中身です。

 

従来の評価方法は学校ごとに評価のバラツキを発生させることや、数値評価であることから生徒と保護者に客観的評価との誤解を与えてきたことが問題として挙げられています。

 

新学習指導要領が2020年から完全施行されるのに合わせ、観点別評価の導入は一人ひとりに寄り添った評価と指導を目指そうというものです。ただ、従来の評価方法が、生徒と保護者にとって学習状況を把握できるものとして浸透し、入試の基準として活用されていることから、観点別評価へ異議を唱える声もあります。今後もワーキンググループ内で議論が続き、年内には結論が出されます。

 

 

■埼玉県公立高校入試における内申点の重み

 

公立高校入試に必要不可欠なものが内申点(調査書)です。地域によって扱われ方に違いがあるものの、かなりの割合で内申点が合否を左右します。埼玉県では中1学年末の内申点から入試の評価に算入されますから、子どもたちは中学入学から気が抜けない学校生活を送らなければなりません。

 

 

ちょっとややこしいのですが、入試の配点について具体的に見てみます。

 

内申点は、5段階評価9教科で45点満点です。1・2・3年時の割合が1:1:2となる場合、45+45+90=180点となります。これに、特別活動等の記録の得点55点、その他の項目の得点30点が加わりますから調査書の総合計は265点となります。

 

当日の学力試験が各教科100点×5教科=500点ですが、学力試験500点+調査書265点とはなりません。実際には調査書の割合を変化させるために、調査書に係数が乗じられて、割合が増減させられます。

 

例えば川越高校の第1次選抜では学力試験500点に対して調査書が335点と調査書の割合が増えています。高校によって異なりますが、5教科学力試験と内申点の入試における割合は6:4程度です。

 

 

愛知県で高校入試を受けた私がちょっとした違和感を感じたのが、埼玉県では中1・2の内申点が入試に算入される点です。入試における中1内申点の重さはどの程度なのでしょうか。

 

上記の例に挙げた川越高校第1次選抜の場合、中1学年末の内申点45点は調査書全体の約17%、学力試験も含めた総合計点の約6.8%を占めることになります。

 

「中1の内申点から含まれるといっても、僅かではないか。学力試験で挽回できるよ」と思った人は早計です。そもそも公立高校の学力試験は全校共通で基本的な問題ばかりですから、学力試験で大きな差をつけることは難しいのです。特に川越高校のようなトップ校を受験する生徒は皆、高得点を取ってきますから尚更です。

 

中1の内申点の失点は自らの首を絞めることになります。まだ入試が遠く感じられる中2の学年末の内申点も併せて考えると、割合は2倍です。中2でも失点するともう首が回りません。中1・2の内申点は、無視できない存在なのです。

 

 

内申点はこうして決まる

 

ところで、教科の内申点はどのように決められるのでしょうか。

 

まず、年に5回もある定期テストの結果が大半を占め、これに授業態度や提出物の状況や小テストが加わります。

 

定期テストの問題は主に担当教諭が授業で行った内容が中心となります。塾やテスト業者が作成した学力テストが、地域や学校に限らない普遍的な学力を計るものだとすると、定期テストは学校に限定的なものといえるでしょう。普段の授業で先生の話を漏らさず聞いている生徒が、定期テストで高得点をとれるのです。たとえそれが一般的な参考書では太字になっていない、または掲載されていないものであっても定期テストで出題される可能性があります。

 

言い方が悪いのですが、さじ加減は先生次第なのです。さらに、授業態度や提出物の状況の評価においては、評価者の主観の入る余地がますます大きくなります。

 

 

ここまで教科の評価について述べてきましたが、さらに厄介なのは"特別活動等の記録の得点”と"その他の項目の得点”です。

 

特別活動等の記録とは何なのか?簡単に言うと生徒会などの学校活動と部活動を指します。つまり、生徒会の役員を務めた者や部活動に3年間継続して所属し、大会で好成績を収めた者に得点がつくのです。レギュラーでない者は高得点を望めません。最悪なのは、欠席がちの者や途中で退部した者には"根気のない者、自己管理のできない者”とのレッテルが貼られてしまうことです。

 

もう一つの評価項目である"その他の項目”は主に検定取得を指すようです。英検(準2級以上)、数検、漢検などが該当するようですが、英数国の学力試験があるにもかかわらず、別途に検定を取得する必要性があるのは解せません。

 

 

以上が埼玉県公立高校入試の評価制度です。ブログに綴っているだけでも疲れてしまうほどです。ここまでお読みいただいた方に感謝いたします。

 

公立中学に通う子どもたちが、どんな世界に身をおき、何を視ながら学校生活に励んでいるのか想像に難くありません。多感な十代前半の時期に内申点を意識しながら学校生活を送る意義と弊害について、そして、そもそもなぜ内申点が公立高校入試に幅を利かすのかについて次号以降で述べていきます。

 

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