理科塾から望む教育コラム

教育、世相、人と街…、肌で感じた小さな発見と疑問について軽い頭を絞りながら綴ります。

1年後・2年後に受験を迎える子と親へ

2020年も12分の1の月日が過ぎました。センター試験と中学入試は終了し、2月に突入した現在は、私立大学・国公立2次・高校入試が佳境をむかえています。中学入試に限って言えば、首都圏の国立私立中学受験者数は4万人台後半を推移し、公立中高一貫校の受験者数と合わせると6万人を超え、首都圏に在住する小学6年生(約29万人)の5人に1人が中学入試に臨んだ計算となります。そして、受験シーズンが終わると同時に1年後2年後の受験に向けて新たな戦いが始まります。

 

 

■そもそも受験する意味を考えたことがありますか?

 

受験に対する子と親の熱の入れ様は相当なものです。中には、少しでも偏差値や知名度が高い学校に我が子を進学させようと躍起になっている親もいれば、目の前に敷かれたレールを信じて進まなければならないと自分を追い込んでいる子もいるでしょう。受験の道を選ぶ、志望校を決定するという判断に対する理由とプロセスは人それぞれに異なりますが、1~2年後の受験に臨もうとする子と親へ、胸に手をあてて考えてほしいことがあります。

 

「あなたはなぜ受験をする(させる)のですか?」

 

偏差値の高い学校を出れば約束された将来がある(はずだ)から。

大学進学実績の高い学校だから。

就職に有利な大学だから。

我が子に苦労する道を歩ませたくないから。

社会の勝ち組になるため。(負け組にならないため。)

自分(親)と同じエリート街道を歩ませたいから。(もしくは、同じ低学歴の道を歩ませたくないから。)

周囲に対して優越感を抱きたいから。

周りが受験する雰囲気だから。

自分だけ周りから出遅れないために。

 

上記に挙げた理由にあてはまる方は、今一度受験する意味を考えてみてください。

 

 

■勉強は世の中に必要とされる、考えられる大人になるためにあるもの

 

受験勉強を通して学びとるものは、パズルを解くような解法の暗記と受験攻略テクニックではありません。受験勉強は、問題から問われている本質を読み取る力、想像力・判断力を駆使して思考する力を養います。中でも大切な成果は、"知りたい・学びたい”という知の欲求を抱ける大人になることです。

 

勉強して身につけたこれらの能力は、自らの可能性を広げ、未知への挑戦を可能にします。視野の広さと知的好奇心は、得意とする分野や興味の持てる道に出会える可能性を引き上げるでしょう。そして、職業はもちろん、社会活動から趣味に至るまで能力を発揮できるフィールドが広がります。人は社会に生きる生き物ですから、自らの生業や活動が人から必要とされたり、世の中の創造を担ったりする経験により幸福感を得られます。勉強して積み上げた能力は、どのように使われるべきなのか、昨年の東京大学学部入学式の式辞において上野千鶴子さんはこのように述べています。

「あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。(原文のまま、一部抜粋)」

 

知性を持たない人は、限られたコミュニティに固執して自分を中心にした尺度で物事を解釈したり、客観的根拠を考えずうわべの情報に流されて行動したりしてしまいがちです。そうした社会には、排除や偏見を助長する空気や変化を受け入れない風土が渦巻き、新しい価値の創造は起こりません。

 

何のために受験するのか、目指したいものや好きなものを学べる環境または個性を伸ばせる環境を手に入れるためでもいいし、受験勉強自体に面白さを見つけられるのならば、それでもいい。答えは、あなたが考えて納得してください。

 

1年後の入試まで残り365日を切りました。一日平均3時間の自習時間(塾の授業時間はカウントしませんよ)をとるとすれば、1,095時間となります。2年後の入試ならば、2,190時間となります。この時間を"まだ余裕がある”と思うか、"もうこれだけしか残されていない”と思うかは、あなた次第です。新受験生のみなさん、心に決めた受験動機をもって勉強に励んでください。(励み方・計画の立て方が分からない時は、理科塾も力になりますよ。)

 

 

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