理科塾から望む教育コラム

教育、世相、人と街…、肌で感じた小さな発見と疑問について軽い頭を絞りながら綴ります。

合格できる人の8つの特徴④ プロの戦略を実践できる【後編】

教育メディアから飛び交う、華々しい合格者数ランキングの裏側にはその何倍もの数の不合格者が存在します。彼らの合否の分かれ道は何だったのか。私の指導経験から得た合格できる人の8つの特徴を10回に渡ってお話しします。新受験生の皆さんの一助となれば幸いです。

 

中編では、受験のプロがどのような視点から戦略を練っているのかについて述べてきました。

後編では、大学附属校と新興系私立進学校の出題傾向ならびに難関私立校と公立トップ校とを併願する際の注意点についてお話ししていきます。

 

 

大学附属校の出題傾向と学習計画

 

大学附属校では、標準的で素直な出題傾向が見られます。ただし、暗記で対応できるようなレベルではなく、本質的な理解と正確な知識の活用力が問われます。また、小論文や長文記述問題が出題され、論理的な表現力が問われるケースもあります。その一方で奇問難問はそれほど出題されません。

 

大学受験がない附属高では、課題研究や論文発表など、高大連携型の学びが行われています。基礎学力と幅広い見識に加えて、探究活動に必要な思考力や表現力に重きが置かれています。

 

つまり大学附属系の学校対策としては、ハイレベル問題を解くよりも、基本問題を深く多面的に理解する学習の方が的を射ていると言えます。また時事問題や社会問題に対する関心と見識を高め、哲学的思考に慣れておく必要があります。様々なテーマに対して自分の意見をまとめられるように日頃から鍛錬しておきましょう。

 

 

新興系私立進学校の出題傾向と学習計画

 

新興系私立進学校では、受験の段階で履修コースが分けられているケースが多くみられます。普通コース、選抜コース、難関進学コースなど名称はまちまちですが、最上位コースや特待枠の生徒が進学実績を引き上げ、学校の看板を背負っています。また最上位コースへの入学合格者数を絞ることで、学校の偏差値を吊り上げる効果も得られます。

 

このような学校では難問が出題される傾向があります。それは、難関大学の合格実績を担える生徒を選抜したいとの学校側の思惑もあります。

 

対してボリュームゾーンの普通コースでは、ほとんど不合格者を出しません。それは新興進学校が公立私立トップ校の受け皿として機能しているため、中~中の上レベルの志願者を確保できるからです。具体的には内申評価点や推薦制度や早い入試日程を活用して、”内定”的に中の上レベルの受験生を囲い込むわけです。

 

たとえば、埼玉県では北辰テストと呼ばれる県内のほとんどの中学生が受検する業者模試があり、中3の北辰テストの成績を県内新興私立校へ事前に提出することで合格の”確約”を取得する慣習が存在します。実際、県内新興私立校の受験データを参照すると特進以外の一般的なコースにおいて不合格者数の割合は受験者数の1割にも満たないのが実情です。

 

つまり新興系私立進学校を滑り止めとして併願する場合、第一志望校の対策を疎かにしてまで受験勉強の時間を割く必要はありません。

 

 

難関私立校と公立トップ校を併願する際の注意点

 

公立学校では内申評価点が3~4割を占め、当日の入試問題は5教科で実施されます。問題レベルは教育指導要領に則っていますから、教科書レベルとなります。上位クラスの公立校では学校独自問題や選択問題が出題されるものの、同様に教育指導要領内での出題であることに変わりありません。したがって受験生に差をつけるために問題数を増やしたり、手間がかかる問題に置き換えたりする工夫が凝らされています。

 

私立学校の問題とは様相が異なるため、受験勉強において各教科の習得すべき内容に差異が発生するわけです。また基本的に5教科が等分に配点されるため、教科の学習配分も異なります。

 

また学習の進捗ペースにも違いがあります。私立学校では学校の指導要領外の問題がお構いなしに出題されます。そこで私立学校対策では、3年の夏頃までに全単元を終了し、秋からは実践問題を積み上げる学習が必要です。しかし、公立学校対策の学習では単元習得を大きく急ぐ必要はなく、定期テストに連動した学習を進めれば良いでしょう。

 

さらに模試の受検計画にも影響を及ぼします。公立学校を目指す場合は全県実施型の模試が中心となるのに対し、難関私立を目指す場合には全国実施型の予備校模試を中心に据えなければなりません。

 

上記の理由からハイレベルな学校を受験する場合、戦略的には私立型あるいは公立型のいずれかに専念することが望ましいでしょう。私立型の受験勉強は公立入試問題への対応が可能ですが、その逆は成り立ちません。受験生本人がプライオリティを私立難関校に据えるならば両立は可能なのですが、難関私立校を公立トップ校の控えぐらいに捉えていると戦略的学習が機能しなくなります。

 

一般に公立文化が根強く残る地域では”私立校=公立上位校の滑り止め”との意識が強く見られます。実際、生徒や保護者の中にも、地域公立トップ校の方がMARCH附属レベルの私立校よりも上との誤解や思い込みが散見されます。既述の通り、難関私立校合格にはそれに特化された受験対策が必要です。定期テスト対策を主とする地域密着塾とは異なるカリキュラムを組んだ塾に通う受験生がほとんどです。難関私立組ライバルたちの学習量と熱量を見誤らないように注意が必要です。

 

次回、合格できる人の8つの特徴⑤ 学習の優先順位を立てられる へつづく

 

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