理科塾から望む教育コラム

教育、世相、人と街…、肌で感じた小さな発見と疑問について軽い頭を絞りながら綴ります。

日々是発見フクロウ日記―ヒト化する!?エキゾチックアニマル―

エキゾチックアニマルって何?一般の方には聞きなれない言葉でしょう。エキゾチックアニマルとは、獣医師さんやペット業界の間で用いられる用語で、外国から来た野生動物や一般的にペットとして飼育されていない動物などを指します。私はかれこれ10年以上に渡りエキゾチックアニマルに分類されるフクロウ(モナリー♀)と同棲しています。

 

当初、モナリーは教室の営業部長としてその居所を教室に置いていました。私は、仕事を終えるとご飯と水を置いて帰宅していましたので、夜行性であるフクロウの夜の生態を直に見る機会は滅多にありませんでした。

 

現在は、リビングに放し飼いの状態でモナリーと生活を共にしています。教室で飼われていた頃に比べてモナリーとの距離感は縮まっています。同時に、地味で存在感の無いフクロウが人間の生活の中で暮らすことによりヒト化してきています。

 

仲間との出会いなのか…?

 

 

■ヒト化した!?猛禽類フクロウ

 

モナリーのヒト化として、これまで勝手に食していたご飯や水を人間に要求する行動が見られるようになりました。ご飯は、解凍された鶉肉を就寝前に置いておきます。モナリーはこれを夜間に1/2羽ほど食べます。翌朝までに食べ残された鶉肉は、傷んでなければ冷蔵庫に保管して次の日に回します。モナリーは、私がラップに鶏肉をくるんで片づける様子を見て、それを理解しているようです。というのもモナリーは、おなかが空くと鶉肉を最後に置いていた場所に飛び降り、嘴をコツンコツンとやりながら、「ここにあった残りの肉を出せ。冷蔵庫にあるんだろ」とアピールしてきます。私が冷蔵庫の扉を開けると「待ってました」とばかりにそわそわしながらこちらを見ています。私が台所のシンクで水を汲んでいることも見て知っていますから、喉が渇くと洗い物をしている私の方をジーっと見つめて「蛇口から水を汲め」と要求してきます。

 

モナリーのヒト化は肉や水を要求する行動だけではありません。私がモナリーに水を飲ませている時には、喉の渇きが潤うと「もういらない、ごちなま(ごちそうさま)でした」と言わんばかりに、止まり木の替わりにしている椅子のカバーで口を拭き始めます。(私が肉をちぎって手あげしている時も同様です。)

 

水浴び(入浴)は1週間にほぼ1回のペースです。この時のアピールぶりは激しく、台所シンクの縁まで飛んできます。(洗剤の泡の中に飛び込むくらいの勢いで飛んでくるので、洗い物をしている私も焦ります。)ただし、人間の都合で水浴びは午前中と決めているために、私の夕食時や就寝前にアピールされた場合はその要求に応じません。「今日は遅いから、(フクロウにとってはこれからが活動時間だが…)水浴びは明日ね。」とモナリーを諭します。モナリーは、納得いかないような鳴き声を発しながら居場所へ帰るのですが、翌朝に人間が活動を開始すると昨夜の約束を覚えていたかのように台所へ飛来してアピールを再開します。人間の勝手な解釈じゃないのかとお思いの方もいらっしゃるでしょう。実は夜間もモナリーは部屋の中を自由に行動できるのですが、私が部屋にいてもそれ以上のアピールは行わず、じっとしています。どこまでモナリーが人間の言葉を理解しているのか分かりませんが、ニュアンスは理解できているのではないかと思わざるを得ません。

 

水飲み用のおけで入浴するの?現在は大きなたらいを与えています。

 

 

■好きなテレビ番組は・・・?

 

私がモナリーと同じ空間に暮らすようになって最大の驚きの一つは、フクロウがテレビを視聴する行動です。モナリーはリビングにいますから、テレビを見られる環境にあります。フクロウの習性からテレビの色や光の動きに反応しているだけではないかと考える向きもありますが、どうやらこの行動はただ見ているものではなく視聴しているものと断言できます。

 

その証拠の一つに、番組を選り好みしている行動が挙げられます。特に好きな番組は動物ものとEテレの子ども向け番組です。

 

動物ものにもさらに好みがあるようで、同種の猛禽類を始め鳥類・ネコ科(ライオン・トラ・猫)が出演している番組を好みます。一方で、魚類や水に生息する生き物には興味を示しません。動物が映し出されている環境もジャングルやサバンナ系を特に好みます。モナリーは南米原産のワイルド種ですので、過去の記憶が蘇るのかもしれません。

 

Eテレに関しては、ピタゴラスイッチを筆頭に0655や子ども向けアニメーションやみんなのうたなどを好みますが、おかあさんといっしょ的な幼児が出演するシーンには無関心です。(モナリーは教室の営業部長だったくせに子どもが苦手です。)

 

視聴するときの態度にも微妙な違いがあり、より好む内容の時には前のめりになって見ています。私がモナリーとテレビとの間を横切ろうものなら、「どけよ、見えないんだよ」といった感じで首をぐるんぐるん回してきます。ただモナリーは、テレビに映し出されるものがそこに存在しないことを理解しているのか、テレビに飛びかかるようなことはなく、たまに頭を掻いたり気がそれたりしてリラックスしています。まるで人がテレビを視聴する様子と何ら変わりません。

 

加えて、テレビ番組に対する内容の理解もしくは記憶もある程度あるのではないだろうかと思える事実があります。モナリーが夜鳴きしてうるさい時の対策として好みの動物系番組を録画保存しています。これを流すと夜鳴きを止めてくれるのですが、視聴回数が増えるとその効果が薄れてしまいます。つまり、「またこれかよ。もう何度もみたよ。」と言わんばかりの態度を見せるのです。録画番組の使い回しは見抜かれてしまうため、アニマルプラネットNHKなどをチェックして新たな番組をストックしておかなければなりません。

いつか見た憧憬なのでしょうか?食いつき方が違います。

 

 

■モナリーは本当にワイルド種なのか、という疑問

 

フクロウは犬猫と異なりペットとして適さないという見解があります。例えば、台湾ではフクロウをペットとして飼うことが禁止されています。人間の生活空間にフクロウを棲まわせる行為は、フクロウへの拷問に近いと考える自然保護団体も存在します。こうした団体は、『人の話し声やテレビの音声が聴力の優れたフクロウにとって騒音でしかなく、旋回して飛び回れない環境は本来の生息環境から乖離している』とその理由を挙げています。そうした主張は一理あるでしょう。猛禽類をはじめハリネズミや爬虫類など珍しい動物に癒しや愛くるしさを感じているのは、人間の一方的なエゴや思い込みでもあるからです。しかし、モナリーの様子を見ているとテレビの音声を不快に感じているようには思えません。

 

お世話になっている獣医さんがモナリーの様子を見ながら口にされた言葉があります。「この子は本当にワイルドかなぁ?」。ブリード種(人間が繁殖させた種)であれば、人と信頼関係を築きコミュニケーションをはかれます。ペットとして一般的な犬や猫はもちろん、鳥類においてもオウムやインコなどは人と主従関係を築きやすい動物です。一方でワイルド種というのは、どんなに飼い慣らしても人と縮まらない距離があります。

 

モナリーを飼い始めた頃には、フクロウの生態や行動を探ろうと試行錯誤していました。犬猫と違い、分からないことが多い猛禽類は些細な変化も見逃さず付き合う必要があります。生活空間を共にするようになってからのモナリーの変化量は大きく、正直こうしたヒト化行動を見せるとは思ってもみませんでした。

 

他にもヒト化した行動や飼育して経験した様々な苦楽があります。10年分のフクロウライフについて第2弾コラムにて綴っていきます。

 

 

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