理科塾から望む教育コラム

教育、世相、人と街…、肌で感じた小さな発見と疑問について軽い頭を絞りながら綴ります。

ねじるのは中尾彬さんのストールだけでいい―文をねじらないで書く方法―

公立学校の国語において、英語のようなロジックで固められた作文法を教わる機会はほとんどありません。そのせいなのか、子どもだけならず大人の中にも作文を苦手とする人が多く見受けられます。そこで作文力を向上させる作文法のコツをお話しします。テーマは“文のねじれ”です。

 

“文がねじれる”とは何なのか?文が中尾彬さんのストールのようにグルグルしてしまうのでしょうか?文のねじれとは、主語と述語が対応していない関係を指します。文のねじれは小中学生の作文によく見られますが、大人も気を抜いて文章を書くとつい文をねじってしまいます。先日、お酒を飲んでいる際に文のねじれを発見しました。

 

とあるメーカーが発売しているレモンチューハイのコピー文にねじれが隠れています。

 

『樽ハイ倶楽部は、1984年に飲食店専用商品として発売し、これまで35年以上愛されてきた樽詰めサワーブランドです。』

 

どこに文のねじれがあるのか、みなさんはお気づきでしょうか。まずは文章を文節ごとに分解してみます。

 

樽ハイ倶楽部は、 / 1984年に / 飲食店専用商品として / 発売し、 / これまで / 35年以上 / 愛されてきた / 樽詰めサワーブランドです。

 

日本語は述語を文の中心として構成されています。この文章では、従属節の2つの述語《発売し》《愛されてきた》が主節の名詞述語《樽詰めサワーブランドです》を修飾しています。つまり、複文の関係となっています。《樽ハイ倶楽部は》が主節・従属節それぞれの述語にかかる共通の主語を担っていると考えられます。係り受けの関係を図に表わしてみます。

 

【主節】

樽ハイ倶楽部は、→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→樽詰めサワーブランドです

  ↓ ↓                             ↑ ↑

  ↓ ↓    【従属節1】                   ↑ ↑

  ↓ ↓    1984年に→→→→→→→→→→→↓       ↑ ↑

  ↓ ↓    飲食店専用商品として→→→→→↓ ↓       ↑ ↑

  ↓ ↓→→→→→→→→→→→→→→→→→→→発売し、→→→→→→↑ ↑

  ↓                                 ↑

  ↓      【従属節2】                     ↑

  ↓      これまで→→→→→→→→→→→↓           ↑

  ↓      35年以上→→→→→→→→↓ ↓           ↑

  ↓→→→→→→→→→→→→→→→→→→→愛されてきた→→→→→→→→↑

                             

                           

主語 主節の述部 従属節の述語

 

 

もうお分かりの方もいらっしゃるでしょう。ねじれは一つ目の従属節における主語《樽ハイ倶楽部は》述語《発売し》との関係に見られます。主語《樽ハイ倶楽部》と述語《発売し》との間にある文節を除くと、《樽ハイ倶楽部は、発売する》となり、ねじれが分かりやすくなりますね。《発売する》の主語はメーカーであり、《樽ハイ倶楽部》は述語の目的語にあたります。つまり、《メーカーは樽ハイ倶楽部を発売する》という係り受けの関係にあります。

 

したがって、《発売し》を《発売され》と受け身の語形に変化させれば、主語と述語のねじれが解消されます。

 

(修正後)樽ハイ倶楽部は、 / 1984年に / 飲食店専用商品として / 発売され、

 

他にも名詞述語など気になる点がありますが、この場ではねじれにのみ注目して論じます。

 

 

■文のねじれが起こる原因

 

このような主語と述語のねじれは小中学生の作文で多発します。例えば、下記の文を例に考察してみましょう。

 

(例文)

「僕の目標はキャプテンとして明日の野球大会でヒットをたくさん打ってエラーを出さないでチームを勝利させたい。」

 

意味は分かりますが、読みづらい文章となっています。その原因を紐解いていきましょう。

 

主語《僕の目標は》と述語《勝利させたい》が対応していません。述語を《勝利させることだ》とすれば、適切な係り受けの関係になります。

 

主語と述語のねじれが発生する原因は、主語と述語が離れてしまう点と一文に情報を詰めすぎる点にあります。文章が長くなると文に引きずられて途中から内容が変わったり、書き出しの主語の存在が忘れられたりします。主語と述語を離しすぎないように一文に載せる情報を絞りましょう。まず文を書く前に、書く内容を箇条書きに記して整理する作業をお勧めします。次に、情報が複数ある際には文を分けて書くようにします。

 

例文の場合では、明日の野球大会の目標について2つの情報が一文に書かれています。

(情報1)キャプテンとしてチームを勝利に導くこと

(情報2)攻撃面でヒットを打ち、守備面でエラーを出さないこと

 

2つの情報を二文に分けます。

 

「僕の目標は、明日の野球大会でキャプテンとしてチームを勝利に導くことだ。そのために、僕はヒットをたくさん打ち、エラーを出さないように頑張りたい。」

 

書いた文にねじれや重複する箇所がないか、書き終わったら声に出して文を読んでみてください。

 

 

 

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