理科塾から望む教育コラム

教育、世相、人と街…、肌で感じた小さな発見と疑問について軽い頭を絞りながら綴ります。

“みんなと一緒”ほど危ないものはない

 がんばれ、がんばれ、受験生♪

 

コロナの猛威は3年が経過しても終息の糸口が見えませんが、この疫病に対する学習と慣れはコロナを日常の一部としつつあります。(もっとも基礎疾患のある方や医療機関にとっては非常事態であることに変わりありません。)

今年の年末年始は行動制限が緩和され、帰省や旅行やお出かけで久々に羽を伸ばした方も多いでしょう。思考停止かつメンヘラ日本人を増殖させるマスクの着用も早く緩和されてほしいものです。

 

一方、受験の世界では年末年始は休暇とならず、受験生は戦いの真っ只中に身を置いています。年が明けると中学入試・大学入試共通テスト・高校推薦入試から戦いの火蓋が切られます。

冬期講習から休みなく問題集とにらめっこしている受験生の皆さん、疲労と緊張もピークに達していることでしょう。それでも勉強狂いの?ハイテンションをキープしたまま戦いに挑んでください。受験生のご家族の皆さんは、美味しいごはんと暖かい環境を用意してご子息の奮闘を見守ってあげてください。

私も、冬期講習からの連日の授業で酷い健忘と体の痛みに老化を感じていますが、最後の瞬間まで塾生をサポートすべく変な?ハイテンションを維持しています!

 

 

 “みんなと一緒”の塾選び

 

さて、受験が佳境を迎えると同時に新入生や新受験生たちの新たな塾探しも始まります。小中学生であれば、その保護者が塾のホームページをググったり、ママ友からの情報を参考にしたりして塾の扉をたたくかと思います。

どの塾の扉をたたくのか、あなたの選択の基準は何でしょうか。

 

価格・知名度・規模・実績・授業形式・指導方法・学びに対する考え方・先生の人柄・先生のルックス

それとも、“周囲の人たちが通っている塾だから”でしょうか?

 

公立文化が根強い郊外や地方において “みんなと一緒”は起こりがちです。

中学入学を控えて、小学校とは次元が異なる学習内容と定期テスト&内申評価に漠然と感じる不安は「塾に通わせなければならない」心理を保護者に掻き立てます。

この場合、「塾に通う」=「学習面の不安解消」となりがちで、そこに“学びの意識”は欠如します。すなわち、塾に通うだけで安心してしまうため、何のために学び、どのように学ぶのかという視点が欠落してしまいます。

 

当然、“学びの意識”が欠如した人は塾側の勉強に対する考え方・指導方針・指導方法には関心が向きません。中長期的な学習計画に発想が及ばず、短期的な目標にすがりがちとなります。つまり、学校の授業の先取りや定期テスト対策や部活動との両立に塾の価値を見い出すようになります。

どの塾を選ぶか・いつ始めるかは、「みんなが通っている塾なら安心・みんなが始める今が始め時」との心理に落ち着くわけです。

 

 

 受験は個人戦

 

公立中学では基礎的な学習内容を一斉一律に進めていきます。また校内に限定された定期テストにより勉強の出来不出来が意識づけされ、授業態度や提出物等を加味した内申評価点がつけられます。

中学受験や大学受験と異なり、特に公立高校を受験する場合において内申点は合否の40~60%を左右します。ゆえに中学生が、内申評価点のために労力を割かなければならない現実を避けるわけにはいきません。

 

ただし、勉強の理解度やペースは人それぞれに異なるはずです。数学や英語のように小学校の単元から積み重ねる教科の場合なら、躓いた単元や苦手な単元を残したまま先に歩を進めては非効率です。そもそも文章力が弱ければ、どの教科でも苦労することでしょう。

また、一を教えれば十まで理解の幅を広げられる生徒もいれば、繰り返すことでジワリと理解がつながる生徒もいます。性格も興味の対象も違えば、生徒を取り巻く家庭環境も様々です。自分に合う指導スタイルは十人十色ですから、“みんなが通っている塾”=「自分のベストな塾」とはなりません。

 

進路についても本来各人各様であるはずですが、公立文化が根強い地域においては “みんなと一緒”の意識が蔓延りがちです。そもそも高校の選択肢が少ない地域もありますが、大都市圏の郊外であれば通学時間を延ばすことにより選択の幅は広がります。しかし、“みんなと一緒”の意識に浸っていては人とは異なる選択肢に気づける機会に出会えません。

 

そうは言っても、友人関係を大切にしたいばかりに同じ高校への進学を考える中学生もいるでしょう。思春期ならではの彼らの気持ちはわかります。しかしながら、その友人と一生行動を共にすることは通常あり得ません。それぞれに目標と居場所を見つけて能力を開花させる道程が進路であり、人生です。道が分かれても真の友人ならばつながりが途絶えることはないでしょう。

 

 

“みんなと一緒”では実現できない高校進学

 

もっとも、地域の限られた選択肢から自らの内申評価点に見合った高校へ進学することが目標ならば、“みんなと一緒”の学習で構いません。

多くの公立中学生がそうであるように、中学3年の夏に部活動を引退し、秋頃からお互いに周囲を見渡し合い、「そろそろ受験勉強を始めるか」と重い腰を上げても高校進学はもちろん可能です。ただ、これまでの自分が知り得なかった環境を垣間見たり、手に入れたりしたいのであれば、周囲と歩調を合わせて受験勉強に取り組んでいてはそれらを実現できません。

 

いわゆる有名難関私立高校や国立高校の受験問題は公立高校入試のそれとは別次元の内容です。

数学は、定期テストで見たこともない複合問題(円周角や線分比・相似比や三平方の定理の合わせ技、複雑な関数問題、柔らか頭を要する確率や規則性問題など)が登場します。国語では大人が読んでも読みにくい論説文や大学入試顔負けの古文が登場します。特に英語では中学の指導要領を逸脱した文法構文や英単語が躊躇なく出題されることもあります。

こうした問題に対処するには中3の秋からでは当然遅すぎます。部活動を行いながらも、中1中2の頃から学校の授業とは別次元の勉強を習慣化しなければなりません。

 

また出題内容の難易度に加えて、早慶附属や国立など、本格的な小論文が出題される高校もあります。時事問題や社会問題に普段から目を張り、文章技術はもちろんのこと、論理的に意見を組み立てる力をつける必要があります。

こうした能力も一朝一夕の学習や訓練では身につきません。「“みんなで一緒”に定期テストを乗り越えよう」をスローガンとする塾に通っていては、自分の学習すべき方向に正しく導いてもらえません。

 

一方で学校は集団生活を行いながら社会性を学ぶ場です。教科の授業を行うものの、上位校進学を指導する予備校ではありません。

学校では将来の職業や夢を考えさせる課題に向き合いさせられます。しかし、10代前半のうちに大人になった自分を想像することなど不可能ですし、あまり意味がありません。

夢を探すよりも、早い段階で学び知識を広げることの面白さに気づく方をおすすめします。学びの面白さに気づいた人は、目標を据えて自分だけの勉強スタイルを確立するでしょう。それは自らの選択肢を増やすに違いありません。

 

 

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