理科塾から望む教育コラム

教育、世相、人と街…、肌で感じた小さな発見と疑問について軽い頭を絞りながら綴ります。

内申点という魔物⑤―公立高校ヒエラルキーと呪縛―

連載コラム「内申点という魔物」第5回は、内申点が生み出す学力階層(ヒエラルキー)とは何なのか、また、そのヒエラルキーの中で子どもたちがどのような意識を刷り込まれるのかについて綴っていきます。

 

 

■公立高校ヒエラルキーとステータス

 

どの地域でも公立高校は、内申評価を基準にしたピラミッド階層を形成しています。地域の一番手校は○○高校で、二番手校は▲▲高校だとの言い方を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。第1回・第3回コラムで既述の通り、公立高校入試はほとんどの高校において同一の試験内容と判断基準とで実施されますから、私立高校以上にヒエラルキーが形成されるわけです。

 

地方都市に行くと、人の学力の度合いを示すにあたり出身大学名よりも出身高校名が引き合いに出される場面に遭遇します。九州では、出身高校の同窓会の結束が固く、紙面に高校の同窓会のお知らせが掲載されます。お知らせには、「○○年卒 株式会社××取締役 佐藤太郎 ▲▲年卒 ●×税理士事務所 鈴木花子」のように同窓生の卒年・肩書と共に氏名が一面にびっしりと掲載されていて驚いた記憶があります。これは、地方都市において全国区の大学名よりも地域の公立高校ヒエラルキーの方がステータスを放っている証左です。

 

 

■カテゴライズは刷り込みの始まり

 

中学3年間の内申評価により、子どもたちは、内申ヒエラルキーで構成される公立高校のいずれかにカテゴライズされてしまいます。似たり寄ったりの成績の集団にカテゴライズされることにより、子どもたちは自分が勉強ができる組なのか・まあまあ組なのか・できない組なのかを刷り込まれます。

 

「私立中学入試でも偏差値を基準とした子どもたちのカテゴライズが行われるから同じではないか」という意見もあるでしょう。確かに中学受験塾に通う子どもたちは熾烈な競争を煽られ、偏差値で人を判断する考え方を持ってしまう一面も持ち合わせています。また、予備校のように徹底した偏差値教育を行い、進学実績を経営の糧としている私立学校もあります。その一方で、私立一貫校は校風や教育方針が公立校よりも多様であり、生徒たちは、6年の一貫した時間の中で偏差値教育以外の基準や世界を見つけられる可能性に恵まれています。

 

高校生になって具体的な進学先を決める際に、「自分の高校からだとこのあたりの大学が限界かな」と漠然と考えた経験はありませんか。大学受験は基本的に実力勝負ですから、どこの高校であっても本人のやる気と頑張り次第で難関大学への合格は可能なはずです。実際に、底辺校と言われる高校から一念発起して難関大学に進学した生徒はいるでしょう。しかし、残念ながらこれは稀有なケースです。

 

確かにヒエラルキー中位・下位の高校には優秀な生徒が相対的に少ないため、進学実績が高くありません。しかし、前回のコラムで脳の発達について述べたように15歳を過ぎてから勉強の能力が開花する生徒は少なくありません。自分の能力からではなく、通っている高校の位置づけから進学先を決めているならば、その行動は自らの可能性を潰していることに他なりません。

 

自分は勉強ができない組だ(もしくは苦手だ)という思い込みが、能力の開花と将来の選択肢を奪ってしまっているとしたら…。

 

中学3年間の内申点が大人になるまで人生のレールを敷き続けてはいけません。人生は80年とも100年とも続くかもしれないのですから。

 

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