理科塾から望む教育コラム

教育、世相、人と街…、肌で感じた小さな発見と疑問について軽い頭を絞りながら綴ります。

解説&解答書を見なさい

アフターコロナやウィズコロナと謳われる昨今、これまでの価値や常識は通用しなくなり、新たな価値や生活様式が創造されようとしています。こうした時代の潮目に生きる私たちに必要なものは、課題を見つけ情報を整理し論理的に考える力(クリティカルシンキング)と想像力です。

 

教育に目を向けると、昭和世代が叩き込まれてきた「こうあるべき・こうすべき」という判断基準や行動規範は、不確実性や流動性が増す現代において色褪せたものとなっています。ところが、公教育の世界においては未だ昭和の風が吹いているようです。例えば、以下のような変わらぬ慣習や価値観が学校現場で今も蔓延っているのではないでしょうか。

 

□ 板書を書き写させる授業スタイルが主流。

□ 私語は厳禁、意見や批判は好まれない。

□ 筆算の横線は定規を用いて書かなければならない。

□ ノートを美しく書き上げる者が評価される。

□ 消しゴムを多用してしまう生徒が多い。

□ 個々の学力や目標を考慮しないノルマ的宿題を課す。

□ 生徒が独自に宿題や課題を先行させることを嫌う。(足並みを揃えたい)

□ 意味を考える学習よりも暗記などのパターン化された学習を優先する。

□ 100点満点至上主義(失敗を好まない減点法的な発想)

□ 受験や社会に通用する普遍的学力よりも定期テストを重視する。

問題集の解説&解答書を生徒に配らない。

 

上記項目の中から今回のコラムでは、赤字で述べた“問題集の解説&解答書を生徒に配らない”に着眼してみます。解説&解答書とは、学力向上のためにどのように向き合えばよいのでしょうか。

 

 

解説&解答書を見てはいけない、との思い込みを捨てよう

 

分からない問題に遭遇した時(ここでは主に算数・数学を中心に考えます)、解説書を開くとカンニングをするかのように後ろめたい気持ちにとらわれませんか。

 

なぜ後ろめたい気持ちになるのでしょうか。

前述の赤字項目の通り、学校が生徒に解説&解答書を渡さないことが一因しています。というのも、解説&解答書を生徒に渡すと生徒がズルをして解答を書き写すのではないかと先生は疑っているのかもしれません。また、生徒が解説&解答書に頼る行為は虎の巻を見るようなものであり、学習にはならないと信じ込んでいるのかもしれません。

生徒も同様の思い込みをしているため、解説&解答書を開くことにパンドラの箱を開けるような後ろめたさを感じるのでしょう。

 

理解もせずに丸写しして提出する生徒が一定の割合で現れるかもしれません。そうしたズルによりノルマから逃げられるかもしれませんが、ズルした行為は結局自分の身に跳ね返るだけです。横着をする生徒は、解説&解答書を手にしていなくともそもそも勉強と正面から向き合わないでしょう。

 

そのように考えれば、先生が生徒に解説&解答書を見せないようにする必要はありません。むしろ、解説&解答書を配る方が生徒のためになります。解説&解答書はパンドラの箱ではなく、それを正しく活用すれば自習力向上の武器となるからです。

 

 

分からない問題に遭遇した時の対処法

 

自習中に解けない問題にあたった時には、以下の方法で対処します。

 

 

一、問題文を注意深く読み直す。問われている内容と明らかになっている情報について図や言葉を用いながら整理する。その上で10分間全力で考える。

 

二、一の方法でも解けない時には、解説&解答書を開く。“なぜそうなるのか”という発想の下に解説を読み解いてみる。

 

三、二の方法でも解けない時には、質問できる人が近くにいれば質問する。ただし質問する際は、自分が解き明かせた箇所と解き明かせない箇所とを整理して相手に伝える。

 

四、質問できる人が近くにいない場合、一旦保留にして次の問題へ進む。時間は無駄にできないという認識を持つ。

 

 

自習力を向上させるポイントは二の対処法にあります。

みなさんは解説書を読んでも良く分からないという経験がありませんか。大半の解説書はスペースの都合もあり、解説文が言葉足らずであったり基礎的な知識や前提が省略されたりしています。ゆえに、解説書はそれを読めば虎の巻のようにすぐに理解できるものではなく、解説内容を理解すること自体に思考と労力が要求されるものです。

解説内容を読み解く中で、「ああ、そういうことか」とか「なるほど、こういう考え方があるのか」とか気づきがあれば、解説書と格闘する行為は理解度の向上と思考力の鍛錬につながります。

 

解説書は、自分には思いつかなかった考え方、或いは学習していたものの上手く組み立てられなかった考え方を学べる場でもあります。つまり、解説書を紐解く行為自体が意義のある学習だと言えます。勉強は個人戦でもありますから、自習の方法を掴み取った者は時間を有効に利用しながら成績を伸ばせていけます。

 

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