理科塾から望む教育コラム

教育、世相、人と街…、肌で感じた小さな発見と疑問について軽い頭を絞りながら綴ります。

国語の長文読解力を向上させる方法

国語はすべての教科の基礎である、と言われます。文章を読み書きできなければ、試験問題で問われている意味も読み取れませんし、答えも正確に伝えられません。そういう意味で確かに国語はすべての教科の基礎だと言えます。

国語力を上げるには、語彙を増やし、文法を学び、読み書きに慣れれば良いと一般的に考えられがちです。確かにそうした学習法は国語力向上の役に立ちます。語彙力が乏しく、文章の係り受けが分からない人は文章を読み解けないからです。

当塾の国語専科コースでも一文の構造分解に始まり、段落ごとの論理構造の捉え方や要約技術を学んでいきます。それは、英文法を学ぶような技術的な学習方法と変わりません。しかし、技術的な知識と学習とだけで長文読解力を身につけられるわけではありません。

 

国語は人の考えに触れ、思考の引き出しを増やす教科

説明文・意見文(コラム)・随筆(エッセイ)などの現代文を読み解くには、そこで論じられている話題に対する見識が必要となります。

対比文の形で頻出される話題として、西洋と東洋との自然観やAIと人との共生などがあります。こうした概念的な話題に触れた経験がある人は筆者の考えを読み解けます。

一方でこうした話題を耳にしたことも考えたこともない人は、筆者が何を言っているのか訳が分からないのではないでしょうか。筆者の考えに触れ、それを思案するには、技術的な文章力があるというだけでは対応できません。

では、概念的な話題に対する見識をどうしたら増やせるのか。この問いに対する答えは、作り手の主張やメッセージが込められた情報ならびに時事問題・ドキュメンタリーなどの客観的情報に普段から触れておくことです。つまり、様々な情報に対してどれだけ好奇心のアンテナを張り巡らせているかと言えます。書籍に敷居を高く感じるならば、漫画や映画でも構いません。

 

先日、小学生向けの長文読解問題でなかなかの難文に遭遇しました。イソップ童話の「北風と太陽」になぞらえて、国家による情報の扱い方と人の自由意志との関係について綴られたコラムです。(米原万里著「真昼の星空」)

 

問題文として引用されていた箇所の内容を要約すると以下の通りです。

人の魂の自由は、太陽のやり方ではなく北風の手口によって実現できるのではないか。北風的な情報の扱い方の例として挙げられるのが、旧ソ連の情報統制である。厳しく情報が管理されている国家において、国民はメディアが発する情報を信用せず、そうした情報と国家に抵抗する中で自己の意志を確認するようになる。

一方で太陽的な情報の扱い方の例として挙げられるのが、アメリカや日本のような民主主義国家で行われている情報操作である。忖度や印象操作がなされたメディアの情報により国民は気づかぬ内に誘導され、それを自己の意志と錯覚してしまう。

 

90年代のソビエト連邦崩壊を知らない小学生にとっては、理解しづらいテーマでしょう。権力礼賛・論調・反体制派・世論誘導などといった新聞の政治面で見かける語句が登場するため小難しさもあります。しかし、日常生活の中で時事問題に関心を持ったり、戦争や独裁を扱った小説や映画に触れたりすると、筆者の考えを理解できるようになります。

国語の長文読解は、筆者の考えに触れ未知の世界を旅する機会です。民俗学・宗教学・倫理学・教育学などの社会科学から生物学・科学技術などの自然科学に至るまで様々な分野とその知見とが文章には詰まっています。

国語という教科は試験問題を解く技術を学ぶ目的で存在するのではありません。筆者の意見からその話題に関心を抱いたり問題意識を育んだりしながら自らの思考の引き出しを増やす目的で存在しているのです。そういう意味で国語はすべての教科の基礎であると言えるのかもしれません。

 

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