理科塾から望む教育コラム

教育、世相、人と街…、肌で感じた小さな発見と疑問について軽い頭を絞りながら綴ります。

個人塾で成績を伸ばせる人

2月は教育業界にとって様々な意味で節目となります。中学・高校・大学受験は佳境を迎え、次年度以降の受験を目指す生徒にとっては学年が切り替わり、ギアが一段上がります。保護者にとっては新たな塾や習い事教室を検討する時期でもあるでしょう。

 

 

■学力を伸ばしたいなら人の真似をするな

 

さて、入塾入会を検討する際に多くの人はまず大手塾を候補に思い浮かべるでしょう。大手塾には知名度と実績(塾によっては情報が操作された数値でもありますが…)があります。また、「〇〇ちゃんと同じ塾だから」などという“みんなと一緒が安心安全”神話を信じて塾を決める人も多いでしょう。

 

大手塾には、大勢の塾生と卒塾生の学習記録や母集団の大きな模試を通して積み重ねたデータがあります。個人塾には持ちえない膨大な情報量は大手塾の強みとなります。矢印がグィーンと伸びた合格実績グラフや卒塾生の合格体験記で見込み客に塾名を印象づける手法も大手塾ならではの広告戦略といえるでしょう。私が大手塾の広報担当なら同様の広告戦略を考えるかもしれません。

 

そうした広告を見る側である生徒や保護者は無意識のうちに塾のイメージを刷り込まれますから、入塾の候補として真っ先に大手塾を思い浮かべるわけです。また、人間という生き物は他人の成功体験を自分に当てはめて考える癖があります。テレビCMや電車の車内広告でもお馴染みの「なんで、私が東大に」的なキャッチコピーを目にして、「私(うちの子)も同じ塾に通えば同じ結果を出せるかも」という気持ちになるのもこのような広告戦略と思考回路によるものです。

 

水を差すようですが、成功した他人と同じ学習法を取り入れても、他人が成しえた素晴らしい実績はそのまま自分に当てはまりません。なぜなら、生活環境や育ちの背景や性格や思考回路、そして何より当人が持ち得ている素養や特性が異なるからです。

 

昨年、史上最多タイ記録となる7度目のワールドチャンピオンを獲得したF1ドライバー、ルイス・ハミルトンは以下のように述べています。

『カートレースをしていた子供の頃、僕はセナやプロストに憧れた。周りの人は、セナやプロストと同じように練習して彼らのようになれと言っていた。でも、セナやプロストと同じように努力しても、バックグラウンドも能力も個性も彼らのそれと異なるので、僕はセナやプロストにはなれないんだ。結局、僕は自分のやり方を見つけることで道を切り拓いてきたよ。』

 

勉強に限らず何かを成し遂げることは、自分に最適化された方法を見つけられるかどうかにかかっています。

 

 

■大手塾と個人塾との違いとは

 

塾の規模に関わらず、指導力人間性に優れた先生は多数いらっしゃいます。生徒がそのような先生と出会えれば、それは成績向上の大きな助けとなるでしょう。

 

しかし先生の能力が優れていたとしても、塾の規模が大きくなるほど授業内容と指導法は最大公約数的にならざるを得ません。というのも生徒は成績ごとのクラスに振り分けられますが、数値的に同じ成績であっても生徒が抱える学習の問題点は様々だからです。基本的理解・読解力・イメージ力・集中力・ミス率・経験量など生徒の特性はまちまちです。どの領域に克服すべき課題があり、伸ばせる力が秘められているのか、個々の状況に合わせた授業づくりは困難となります。

 

加えて生徒が志望する学校の数は、ほぼ生徒の数の通りあります。入学試験は学校ごとに出題傾向が異なりますから、志望校に合わせた学習と対策が必要となります。ところが集団授業においてそうした授業を行うことは物理的に不可能です。解決策として、どの志望校にも通用する“最大公約数”的な授業を行うしかありません。

 

もちろん、最大公約数の集団授業にも良い点はあります。他の生徒の学習状況を常に把握できるため、いい意味でのライバル意識が芽生えれば日々の勉強に切磋琢磨するでしょう。周囲に流されやすい人、やる気に火をつけることが苦手な人は集団授業向きといえます。

 

生徒の特性と目標に最適化された指導を享受するには、同一の先生による個別指導が適しています。個別指導の先生は、生徒とのコミュニケーションを密に取りながら、生徒の成長を一貫して見守り伴走する役割、つまり生徒のかかりつけ医のような役割も担います。良いコミュニケーションをとるためにも両者の間に信頼関係を築く必要があります。先生は一人ひとりの生徒に対してエネルギーを割きます。対して生徒は、ライバルの様子が見えない中で先生を信頼して自分を律する姿勢を求められます。

 

知名度や他人の実績や“みんなと一緒”だけで塾選びをすると無駄な授業料を払い続けるばかりではなく、自ら(我が子)の成長のチャンスを失ってしまう事態にも陥りかねません。自分(我が子)がどちらの方針に向いているのか、塾に直接足を運び、自分(我が子)の個性と目標ともよく相談して、吟味されることをお勧めします。

 

 

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